ピッツバークからフリントへ。悩ましい公共水道を民間企業に任せてしまった悲惨な結末
2018年末成立した改正水道法がコンセッション方式を導入し、今後自治体は政府が懸命に推進するコンセッションをやるか、やらないか検討しなければならない時代となった。2015年を前後して、米国ピッツバークで水道水の鉛汚染が起きたときに水道を運営監督していたのは水道ビジネスで世界トップを誇る企業だった。自身を「グルーバルな水問題と環境ソリューションを提供者」と自認する同社であるが、まったく違う顔が見えてくる。米国各地だけでなく世界各地で、環境汚染、健康被害、賄賂、料金をめぐって訴訟を含めた論争が絶えないのだ。
水道運営で問題が起きたとき、企業はどのような行動をとるのか。鉛汚染のような健康に直接甚大な影響がある水質問題、水道管の破裂や下水施設からの汚水の流出、災害や地震となれば問題は緊急かつ複合的となる。ピッツバークとフリントは問題が起きたときの行政と企業の責任のすみ分けの困難さ、企業に責任を負わせる困難さを人命を含む非常に高い代償をもって学んだ。企業の管理のもと人員をぎりぎりに再編成された水道事業体は緊急時にどこまでできるだろうか。
コンセッション誘致を優先する自治体は災害時の責任を自治体に残すと予測される。企業に責任を持たせても責任追及は困難、責任が重すぎれば企業は参入しない、自治体が責任を持てば自らの指揮下にない体制を指揮しなくてはならない。なんというジレンマ。水道と民営がなじまない核心的な理由の一つがここにある。数十年に渡る長期契約で水道システムに問題が何も起こらないことはまずない。人命や健康被害に関わる問題なのだからこそ教訓を真剣に見なくてはならない。